特急「サロベツ」 キハ261系 宗谷本線


 在来線の高速化で採用されていた制御付自然振子式車体傾斜は、複雑な台車構造などに起因する保守費用増大という課題があり、この解決策としてJR北海道では川崎重工業が開発した、台車左右の空気ばねの片方の内圧を高めて強制的に車体を傾斜させる方式を、札幌圏向け通勤型気動車のキハ201系で採用し、1997年(平成9年)から営業に投入しました。この方式は曲線通過性能こそ制御付自然振子車に劣るものの、車体・台車の構造に大きな変更を伴わず費用対効果に優れた技術でした。
 そこで、宗谷線高速化事業では、キハ201系を基本とした強制車体傾斜方式の特急型気動車を新規に開発・投入することとなり、キハ261系が開発されました。キハ261系は1998年(平成10年)12月に試作車が落成し、走行試験ののち、高速化工事完了後の2000年(平成12年)3月11日ダイヤ改正で札幌駅 - 稚内駅間の特急「スーパー宗谷」として営業運転を開始しました。2017年(平成29年)3月4日ダイヤ改正以降は、札幌駅発着の「宗谷」、旭川駅発着の「サロベツ」として引き続き稚内方面の特急列車で運用されています。
 宗谷線高速化事業における車両(12両)の事業費用は21億円ですが、このうち車両の購入については沿線自治体が約1/3にあたる6.4億円を負担し、JR北海道も同額を自己資金から負担、残りは政策金融機関からの借入で調達しました。自治体からの助成を受ける関係で、初期投入分の12両については第三セクター「北海道高速鉄道開発(以下、道高速)」が車両を保有し、JR北海道は同社から車両の有償リースを受けて運行を行っています。
 キハ261系は、キハ281・283系比で15〜20 %の製造コスト低減を目指し、基となったキハ201系と床下機器や制御はほぼ同等となっています。内外装デザインは、1990年(平成2年)10月からJR北海道と姉妹鉄道として提携関係にあったデンマーク国鉄 (以下、DSB) との7か月に亘る共同作業で作成されました。これは両社の鉄道車両における共同制作第1号となりました。

外装
 軽量構造のステンレス製構体(ビード付きのヘアライン仕上げ)ですが、前頭部のみ普通鋼製です。車体断面は、車体傾斜時でも建築限界内に収まるよう客室窓下辺から上方が台形状に窄まっています。前頭部はキハ281・283系同様、前面に貫通扉を設けた高運転台式として、下部に踏切事故などに備えた衝撃吸収構造を採用しました。スカートにはキハ201系の排雪機能とキハ283系のエゾシカ衝撃対策が反映されました。前照灯は正面下位の左右にHID灯とシールドビーム灯を各1灯設けたほか、運転台直上にもHID灯2灯の全6灯を設けました。尾灯は運転台の風防内部に左右各1灯を設置しています。正面貫通扉上にはEL板による愛称表示器が設置されました。
 客用扉は引き戸式を採用し、戸袋への氷雪の侵入・凍結による開閉不良防止のため、ドアレールのヒーターに加え「押さえシリンダー式ドアを採用して気密性を高めています。また、低床ホームに対応するステップを装備しています。
 外部塗色は「ブロックパターンデザイン」を従来車から踏襲し、客用扉の窓周辺にアクセントカラーの黄色を入れています。

機器類
 駆動機関には直噴式のN-DMF13HZH形ディーゼルエンジン(定格出力 460 PS / 2,100 rpm、ターボチャージャー付)に自冷式変速1段・直結4段、パワーオン制御付きの N-DW16A形液体変速機が採用されました。エンジンは、M1車は1基、他車両は2基搭載とされました。変直切替は車両ごとに自動制御されます。
 台車はキハ201系(N-DT201形)を基本とした軸梁式ボルスタレス台車(ヨーダンパ付き)で、動台車がN-DT261形、付随台車がN-TR261形です。低重心化のため新製時車輪径はキハ283系・キハ201系などと同様810 mmとなっています。
 ブレーキ装置は電気指令式空気ブレーキで、機関ブレーキと排気ブレーキを併用します。基礎ブレーキ装置は苗穂工場製の特殊鋳鉄制輪子を用いた両抱き式踏面ブレーキで、これと各軸ごとの滑走・再粘着制御により、氷結レール面においても130 km/h から十分な余裕をもって600 m 以内での停止が可能です。
 空気圧縮機は車体傾斜の応答性向上・1エンジン車が含まれることを考慮し、気動車では初めてC1000形(C1000H)を採用し、エンジンと直結となりました。また、発電装置・機関冷却装置を駆動する補器駆動装置は検修省力化・安全性向上を狙い、従来のベルト駆動から油圧駆動となりました。
 冷房装置は各車屋根上にキハ201系と同様の温風暖房機能も搭載した集中式のN-AU201形(30,000 kcal/h)を搭載しています。

車体傾斜装置
 車体傾斜のための曲線検知は、キハ281・283系が用いているマップ式ではなくセンサ式とし、車上での曲線データの保有や地上設備を不要としました。曲線に差し掛かると、先頭車両に搭載したジャイロセンサー(角速度センサー)により車体のヨーイング角速度と走行速度を検知し、制御装置では、検知されたヨーイング角速度と走行速度から曲線の方向・角度を求め、加えて内蔵された加速度センサーから左右加速度を求め、傾斜角度を決定します。傾斜に当たっては、各車両に2基ずつ搭載された車体傾斜電磁弁により、台車外軌側の台車枕ばね(空気ばね)内圧を高め、車体を傾斜させます(通常2度、最大3度)。目標の傾斜角度に到達したかは、高さ調整弁に内蔵された車高センサーで検知します。各車両は先頭車両で検知された情報を引き通し線で受信し、先頭車両から自車までの距離および走行速度を考慮し、曲線通過前に台車を車体に対して平行にする制御を実施した上で車体を傾斜します。これにより遠心力による外軌側空気ばねの一時的つぶれによる車体上昇遅れ・傾斜自体のタイムラグを補償します。別途先頭車両は一定以上の速度で常に台車を車体に対して平行にする制御(車高連続制御)を実施します。
 キハ201系のものから元空気溜圧向上、配管径拡大、電磁弁容量向上による応答性向上、などが行われ、キハ201系比で2倍の空気ばね伸縮速度(30 mm/sec 以上)が確保され、ほとんどの曲線において緩和曲線通過中に目標傾斜角2°まで傾斜可能となり、許容カント不足量を90 mm以上(キハ201系比で10 - 15 %引き上げ)としました。
 しかしながら、2014年(平成26年)8月30日ダイヤ改正をもって、軌道や車両への負担軽減、機器トラブルの防止を目的として、本系列の車体傾斜装置の使用を取りやめました。その後、先頭車ロゴについては"HET 261 Hokkaido Express Train"に順次変更されています。



配置と運用

苗穂運転所
キハ261系0番台は、全14両が在籍し、SE-104編成を除き道高速が保有しています。

特急「宗谷」:1往復(全列車)
特急「サロベツ」:2往復(全列車)


参考:https://ja.wikipedia.org






特急「サロベツ」 キハ261系 函館本線 旭川



特急「サロベツ」 キハ261系 宗谷本線 天塩中川



回送「サロベツ」 キハ261系 宗谷本線 南稚内ー稚内



特急「サロベツ」 キハ261系 宗谷本線 稚内



特急「サロベツ」 キハ261系 宗谷本線 稚内



特急「サロベツ」 キハ261系 宗谷本線 南稚内ー稚内





キハ261系0番台 主要諸元

形式 キハ261系0番台 
運用者 JR北海道
製造所 富士重工業
製造年 1998年~2001年
製造数  14両
運用開始  2000年3月11日
最高運転速度 120 km/h
全長 21,670 mm
全幅 2,800 mm
全高 4,012 mm(中間車)
車体 ステンレス鋼
(前頭部のみ普通鋼)
台車  N-DT261
N-TR261
(ヨーダンパ付
軸梁式ボルスタレス台車)
走行機関  N-DMF13HZH形×2基 / 両
機関出力 460 PS / 2100 rpm
変速機 N-DW16A形
変速段   変速1段 直結4段
(パワーオン制御付
最終減速比1.860)
発電機関 N-DM283G3形
(25 kVA) ×2台 / 両 
制動装置  電気指令式空気ブレーキ
(機関・排気ブレーキ併用)
保安装置 ATS-SN・ATS-DN・EB・TE





JR北海道キハ261系0番台 配置表 2023年4月現在
ユニット
番号
キハ260
(M1)
キハ261
(Mc)
製造 落成配置 新製日  現配置 備考
SE-101 101 101 富士重 苗穂 1998.12.03 苗穂 試作車 道高速から有償リース
SE-102 102 102 富士重 苗穂 1999.12.04 苗穂 道高速から有償リース 
SE-103 103 103 富士重 苗穂 1999.12.24 苗穂 道高速から有償リース
SE-104 104 104 富士重 苗穂 2001.10.11 苗穂 JR北海道所有 


ユニット
番号
キロハ261
(Mcs)
キハ260
(M2)
製造 落成配置 新製日  現配置 備考
SE-201 201 201 富士重 苗穂 1998.12.03 苗穂 試作車 道高速から有償リース
SE-202 202 202 富士重 苗穂 1999.12.04 苗穂 道高速から有償リース 
SE-203 203 203 富士重 苗穂 1999.12.24 苗穂 道高速から有償リース






















キハ261系